性行為の際、ヒリヒリと入口が痛い、締めつけるような痛みがする、奥がズキズキと痛いなどといったことを感じることはありませんか?
今回は、「性交痛の原因と症状」「性交痛の治し方」について解説していきます。
「以前は問題なくできていたのに」とご相談に来られる方も増えております。当院ではデリケートゾーンに特化しており、様々な症例を取り扱ってきました。
院長 みつゆき みどり
目次
性交痛とは?
セックスの際に「痛くて入らない」「入っても痛い」と感じること
性交痛とは、性交渉(セックス)の際に、「痛くて入らない」「入っても痛い」といった痛みを指し、20代~60代と幅広い年代の方が性交痛で悩んでいます。
上のグラフは、2020年全国満20歳~69歳の女性約2,500人が回答した市場調査の結果です。セックスの痛みは更年期の悩みというイメージが強いですが、20代~40代の女性でも約6割の女性が性交痛を経験しています。
性交痛の症状は大きく次の3つに分かれます。
1
膣の入り口がヒリヒリと痛い、または痛くて入らない
2
膣の中が擦れて痛い
3
奥に当たるとズキズキと痛い
それぞれ症状により原因は異なります。まずは自分の性交痛の原因を理解しましょう。
性交痛の原因
性交痛の原因で考えられるのは次のようなものがあります。
それぞれ詳しく解説していきます。
入り口が痛い、中が擦れて痛い場合の原因
膣の入り口付近にヒリヒリとした痛みを感じる場合「入口部性交痛」と呼びます。
この場合、挿入時に痛くて入らない、入っても入口が擦れて痛いということ方が多いです。原因としては乾燥や生まれつきの膣の形によるものが多く、重大な病気の場合はほとんどありません。
また乾燥が原因の場合は、悪化すると膣の中も痛みを感じる場合があります。
それぞれの原因を詳しく解説していきます。
女性ホルモンの減少による乾燥
そもそも痛くて入らない、または入っても中が擦れて痛い、という症状の原因の多くは膣の乾燥です。
前戯不足のため乾燥している場合もありますが、多くは女性ホルモンの減少が原因となります。女性ホルモンであるエストロゲンは卵巣から分泌されて、膣の弾力や潤いを与えてくれる働きがあります。
この分泌量が減少すると、膣粘膜が乾燥したり固くなったりして摩擦による痛みが生じることがあります。
エストロゲンの分泌量は次の要因で減少することがあります。
- 更年期、産後、生理周期の中でも排卵後にエストロゲンの分泌量が減少
- ストレスや疲労によるホルモンバランスの崩れ
- 過剰なダイエット、長期間の低用量ピルの服用
- 食生活、喫煙、睡眠時間などの生活習慣の悪化
女性の体はデリケートであり、ちょっとした生活習慣の変化やストレスでも女性ホルモンの分泌量は変わり、膣内のうるおいに影響を及ぼしてしまいます。
この場合は膣の乾燥を改善する治療がオススメです。
トラウマやストレス
セックスに何かしらの不安がある・セックスに対するトラウマやストレスがあると、それが原因となって痛みを引き起こしてしまいます。
トラウマのような心理的な原因で、挿入しようとすると入口付近の膣の筋肉が痙攣し全く入らない方もいらっしゃいます。
これは膣けいれん(ワギニスムス)と呼ばれるもので心因性の疾患だと考えられています。
この場合はカウンセリングを受ける、パートナーとしっかり話すなど、心理的なアプローチを行うことが重要です。またダイレーターを用いて少しずつ入るようにする対策もございます。
コンドームのアレルギー
ラテックス製のコンドームに対してアレルギーを持つ方がいらっしゃいます。
この場合かゆみ、腫れ、蕁麻疹などが見られます。また稀にアナフィラキシーショックを引き起こす場合もあるため、注意が必要です。
対策としてはラテックスフリーのコンドームを利用することがおすすめです。
膣の炎症
膣の中が痛む場合、膣が炎症を起こしている場合もあります。
炎症として考えられるのは次のものがあります。
- 細菌性膣炎
- カンジダ膣炎
- トリコモナス膣炎
- 萎縮性腟炎
萎縮性膣炎は閉経後の女性によく見られ、膣の乾燥により外陰部や膣が萎縮変化を起こし、それにより出血しやすくなったり、雑菌が繁殖して炎症を引き起こしたります。このような閉経後の女性の膣の不調はGSMと呼ばれ近年新しい概念として広まりつつあります。
萎縮性膣炎は膣の乾燥が悪化したことが原因となりますので、早めに乾燥の対策を行うことが重要になってきます。
GSMについて詳しくはこちらから
処女膜強靭症
処女膜は厚さ1mm程度の薄いヒダ状の膜ですが、処女膜強靭症の方の処女膜はこれよりも厚く伸縮性もありません。
そのためセックスをしても簡単に処女膜を破ることができず、毎回セックスの時に痛みや出血の症状がみられます。
奥に触れて痛む場合の原因
行為中のピストン運動とあわせて、奥がズキズキと痛む性交痛は「深部性交痛」と呼ばれます。
この場合、単に体位が原因のこともありますが、特に奥に触れた場合に激痛が走る場合は、重大な病気の可能性もあり、注意が必要です。
詳しく膣の奥に触れた際に痛む場合の原因を解説していきます。
婦人科の病気
膣の奥で痛みを感じる場合は、子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮内膜症などの婦人科系の病気が潜んでいる可能性があります。
放っておくと、大掛かりな治療が必要となったり、不妊の原因となったりする場合があるので要注意です。
体位の問題
体位によっては奥まで深く入りすぎる場合があります。もともと膣が小さい方は奥まで強くあたり、痛みを感じるため体位は工夫する必要があります。
性交痛の治療方法
性交痛の治療方法について、すぐにできるセルフケアとクリニックでの治療についてそれぞれ説明します。
自分でできるセルフケア
- リューブゼリー等の潤滑ゼリーを使用して、痛みを和らげる
- パートナーとよく話し合う
クリニックでの治療
- インティマレーザー(乾燥の改善)
- 処女膜切開術(処女膜の治療)
リューブゼリー等の潤滑ゼリーを使用して、痛みを和らげる
リューブゼリーは、潤滑液の代わりに痛みを緩和させるアイテムで、当院でもおすすめしている潤滑ゼリーです。
体への安全性に徹底配慮して作られているため、安心して使用することができます。
性行為の直前に膣へ塗っておくと、自然な濡れを再現することができます。
「たまに痛くて入らないことがある」
「初めから痛みを感じたくない」
このように感じている方は、リューブゼリーを使用するだけでも効果があるでしょう。
ただし、ずっと使い続けるのが億劫な方は根本的な治療をすることをおすすめします。
心因性の疾患はパートナーとよく話し合う
心因性からくる性交痛は女性一人の問題ではありません。症状を改善していくためには、パートナーの理解と協力が必須です。
過去のトラウマや、行為中の不満などは言いにくく、また非常にセンシティブな内容ではありますが、相手とよく話し合い、向き合ってもらうことが必要です。
痛みがあることを伝えずに、我慢しながら無理にセックスを続けると膣炎などの症状に繋がることもあります。
痛みや出血がある場合は、必ず相手に自分の気持ちを伝えるようにし、パートナーの協力を得ましょう。
インティマレーザー(乾燥の改善)
メスを使った手術ではないので、体への負担を少なく、治療を行うことが可能です。
レーザーを膣内に照射することで膣の細胞を活性化し、弾力性の向上、潤いの改善が得られます。
インティマレーザーは、膣粘膜の深い層にまでエネルギーが届き、小陰唇や膣の入り口~奥までの広い範囲を施術することが可能です。
またインティマレーザーでは性交痛だけでなく、膣のゆるみ、黒ずみなどさまざまな悩みに効果的です。性交痛には「レノバレイズ」と呼ばれるモードでの照射が行われます。
また最近では3Dレーザーといって複数の波長のレーザーを照射することにより1回での施術による治療効果をさらに高めたレーザーも出てきています。
インティマレーザーで解決できること
- 性交痛の改善
- 挿入の際のヒリヒリがなくなる
- 膣が乾燥しにくくなる
- 膣の潤いアップ
- 膣内環境が改善される
- 女性器まわりのにおいやおりものが改善される
治療中の痛みや治療後の注意点
施術自体は約15分で終わり、麻酔クリームを使用するため施術中も痛みを感じることはほぼありません。
施術後も、シャワーは当日から可能で、入浴も翌日からで問題ありません。性交渉は3日後からをお願いしていますが、それ以外の制限はありません。
処女膜切開術(手術による治療)
痛くて入らない場合は、処女膜が厚くて硬い処女膜強靭症の可能性があります。
「処女膜切開術」で厚くて硬い処女膜を切開し、膣の入り口を少し広げることで症状を改善します。
この手術ではリラックス麻酔(静脈麻酔や局所麻酔)を使用するため、全く痛みを感じることなく治療を受けていただくことが可能です。
手術後は、吸収糸と呼ばれる溶ける糸が縫合しているため基本的には抜糸の必要はなく、術後再度行う検診で問題なければすぐに性行為(セックス)が可能になります。
処女膜切開術で解決できること
- 挿入が困難なほどの痛みが改善できる
- 初体験以降も感じる強い痛みが改善できる
治療中の痛みや治療後の注意
静脈麻酔と局所麻酔を使用するため、全く痛みを感じることなく治療をうけていただくことができ、手術自体は約15分で完了します。
手術後はシャワーを翌日から、入浴を7日目から、性交渉は7日~1か月からをお願いしています。
また、血液がにじむ可能性があるため、3~4日はナプキンを当てていただきます。
ナプキンに血液が滲む間は、激しい運動や過度の飲酒は控えた方が良いですが、基本的に日常生活は通常通り送ることができ、翌日からお仕事に行かれる方も多いです。
我慢せずに相談しましょう
性交痛はとてもデリケートなお悩みであり、特に女性は痛みを感じていてもなかなかパートナーに言えず、1人で抱えてしまう方が多いです。
しかし、我慢を続けてしまうと性交渉が億劫になったり、恐怖心を抱いたりする可能性がありますので、決して1人で我慢しないでください。
痛みを感じる部分は人それぞれであり、症状や痛みの場所も異なります。
痛くてそもそも入らなかったり、激痛でどこが痛いかも分からない場合もあれば、一方で、挿入はできるけど膣の入り口部分がいつも痛みを感じたり、ヒダ(小陰唇)が中に巻き込まれて引っ張られて痛いというケースもあります。
様々な症状があるので、まずは一度カウンセリングにいらしていただき、細かい症状や痛みの場所をお伺いできればと思います。そのあと、あなたに合った適切な治療をご提案していきます。無理に治療を受けてもらうようなことはしませんので、ご安心ください。
性交痛に関するQ&A
もちろん、これ以外にも疑問点・不安な点がありましたらお気軽にご相談ください。
施術担当
インティマレーザー、ウルトラヴェラを日本で初めて導入してきた美容婦人科のパイオニア。美容婦人科の先進国であるアメリカ、ビバリーヒルズにおいてレーザーによる膣の引き締め手術やレーザーを用いた女性器形成のライセンスを日本人女医として初めて習得。その後日本人向けに改良すると共に、より専門的に女性特有のお悩みを解決するため美容婦人科専門クリニックを東京に開業。